b器とは・・・? |
信楽の土から焼かれる焼物は他の多くの産地の陶器や磁器と異なる独特な焼物でb器と分類されます。あまり耳にしたことのない言葉だと思いますが、磁器は吸水性がなく透光性があり、陶器は吸水性があり透光性がないのに対してb器は光を透過しませんが若干の吸水性を持っています。見た目は陶器と殆ど変わりませんがb器を叩いてみると磁器のような澄んだ音がします。信楽焼の他にb器と分類される焼き物は備前焼や常滑焼の急須、ウェジウッドのジャスパーウェアと言えばb器のイメージが沸いてくるのではないえしょうか? |
土味と『侘び寂び』 |
信楽焼は独特な土味を持ち、穴釜や登り窯での焼成による窯変(焼成中、窯の中で変化が起こり色や艶などに自然な変化が起こること)によって火色(緋色)の発色、自然釉にるビードロ釉、焦げによる味わいで、『侘び』と『寂び』を表現しています。素朴な信楽焼の代表的なものに、和の文化と日本人の風情を表現した室町時代・桃山時代以降の茶道具があります。『一楽
二萩 三唐津(信楽焼 萩焼 唐津焼)』と言われていますが、茶道の発展と隆盛の波に乗り『茶陶信楽』として多くの茶人・文化人に親しまれ珍重されたことも信楽焼独特な土味が所以になったことでしょう。 |
鎌倉時代頃から信楽の陶工たちは宋代の陶磁器に習い穴窯による種壷や擂鉢等の日用雑器を作り続けました。それらの信楽焼の技術と作品は人々に受け継がれ、室町時代末期には釉薬を施さない信楽焼独特な土味を生かした温かみのある器が焼かれました。
小石の混じった粗い土肌、生地の色だけでなく焼成時の窯変により現れる火色(緋色)の発色と焦げ、焼成時の温度によって淡黄色や緑色の自然釉に被われたり、また粘土に含まれる長石粒が熔け乳白色の斑が生まれたりと信楽焼の表情には素朴な温かいものがあります。焼物全体を発色させる『火色(緋色)』、灰被りによる『焦げ』、荒い粘土で作られる『石ハゼ』等は信楽焼独特な魅力としてその時代から現在まで長く愛され続けられました。 |
土味と素朴で温かい表情に茶人たちは信楽焼独特の美しさを見出し珍重してきました。『侘び茶』が流行隆盛するようになると信楽の焼物は千利休、武野紹鴎等により茶道具に取り上げられ、古信楽独特な『侘び寂び』と言われる素朴さと簡素な美しさが特徴的な焼物として評価され珍重されました。 |
商業が一段と発達した江戸時代中期には登り窯の技術が伝わり、それまでの信楽焼の主流であった茶器の他に土鍋、鉢、酒器と言った日常使いの食器などが徐々に生産されるようになりました。さらに明治時代以降の近代には、それまでになかった『なまこ釉』を施した焼物が生産され、他にも多くの釉薬(上薬)が研究され優雅な火鉢等を代表する各種の陶器が作られました。そして信楽焼と焼物の産地としての信楽は全国の需要に対応する大きな生産量を賄うほどに発展しました。 |